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ESG監査の課題

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Published:
July 22, 2024

環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英単語の頭文字をとったESG監査は、現代のビジネスにおいて必要不可欠なものとなっています。この監査は、企業の持続可能な社会を目指すための取り組みを詳細に評価するものです。

しかし、どの新興分野もそうであるように、ESG監査にもいくつか課題があります。この記事では、これらの課題について掘り下げ、ESG監査の複雑さを理解するための情報を提供します。

目次:

  1. ESG監査とは?
  2. ESG監査の課題
  3. 課題を克服するために
  4. まとめ

ESG監査とは?

課題を探る前に、ESG監査の内容を理解することが重要です。ESG監査では、企業の環境面、社会面、企業経営面での取り組み、例えば温室効果ガス排出量の管理、従業員の待遇、企業経営の仕組みなどが評価されます。

これらの監査は、投資先が自身の倫理的価値観と一致することを望む投資家や、持続可能な取り組みの強化を目指す企業にとって非常に重要です。

しかし、ESG監査は複雑です。多くの要素を含み、異なる業界やそれぞれの特有の課題に対する深い理解が必要となります。この複雑さが、監査人や企業にとっていくつかの課題を引き起こす原因となっています。

ESG監査の課題

標準化の欠如

ESG監査の大きな課題のひとつは、標準化の欠如です。明確で普遍的に受け入れられている基準がある会計監査とは異なり、ESG監査はまだ発展途上にあります。

ESG監査にも、さまざまなフレームワークやガイドラインが存在していますが、一般的に受け入れられている共通の基準はないため、監査人が企業を評価したり、企業がESGのパフォーマンスを向上させる方法を見つけるのが難しくなっています。

また、このような標準化の欠如によって、企業ごとに異なる指標が使われる可能性もあります。その結果、投資家やその他のステークホルダーは企業を正確に比較しにくくなり、混乱や誤解が生じることがあります。このことは、ESG監査の効果を低下させる原因にもなります。

複雑なESG監査項目

ESG監査の対象となる項目は非常に複雑で、相互に関連しています。例えば、環境に関する項目は社会およびガバナンスに関する項目に影響を与えることもあります。この複雑さが、監査人が企業のESGパフォーマンスを正確に評価することや、企業が自分たちの行動の影響を理解することを難しくしています。

さらに、サステナビリティや倫理観についての人々の理解が深まるごとに、ESG監査の項目は変化し続けます。この絶え間ない変化により、企業が最新の動向に対応することや、監査人がベストプラクティスを維持することが難しくなります。何を監査すべきかが明確になっていないことも多いのが現状です。

データの入手と質の問題

監査においてデータは非常に重要ですが、ESG監査ではデータの入手とその質の問題が大きな課題です。多くの企業は、ESGパフォーマンスを正確に評価するために必要なデータを持っていません。データがあったとしても、それが高品質で信頼できるものであるとは限らず、監査人が正確に評価することが難しくなっています。

さらに、信頼できるデータがないと、改善が必要な領域を特定したり、自分たちの行動の影響を測定することができないため、企業が進捗を追い、ESGパフォーマンスを向上させることが難しくなります。

評価の主観性

ESG監査は主観的な評価を伴うことがあります。例えば、従業員への待遇や地域社会への影響を評価する際、人それぞれの偏見や異なる解釈が影響を与えることがあります。この評価の主観性が、統一された基準や信頼できるベンチマークの作成を難しくしています。

異なるステークホルダーの期待

投資家、顧客、規制当局などのさまざまなステークホルダーは、それぞれESGの異なる側面を重視することがあり、その場合企業は複数の、時には相反する要求に対応するプレッシャーを感じることになります。

課題を克服するために

標準化されたフレームワークの設定

ESG監査の課題を克服する方法の一つは、標準化されたフレームワークを設定することです。このフレームワークは、企業と監査人に明確なガイドラインを提供し、企業間を比較しやすくし、パフォーマンスの進捗を追いやすくします。

いくつかの組織はすでにこれらのフレームワークの作成に取り組んでいますが、広く受け入れられ、施行されるまでには時間がかかります。

それまでは、企業と監査人はGRI、SASB、TCFDなど、現時点で最も広く受け入れられているフレームワークとガイドラインを使用するという選択肢があります。

データ収集と報告方法の改善

ESG監査の課題を克服するためのもう一つの重要なステップは、データ収集方法の改善です。企業は、高品質なデータを収集できるシステムに投資する必要があります。

また、提供するデータが正確で信頼できるものであることを保証するために、データ分析結果の報告方法も改善する必要があります。

一方で監査人は、受け取ったデータを検証する方法を確立する必要があります。また、最新のデータ収集とその報告方法も把握し、企業のESGパフォーマンスを正確に評価できるようにする必要があります。

まとめ

本記事では、ESG監査はビジネス運営において重要な部分を担っているものの、標準化の欠如、複雑なESG監査項目、データの入手と質の問題などの課題を伴うことを説明しました。これらの課題を克服するには、企業、監査人、規制当局が協力する必要があります。

ESG監査は、企業がサステナブルかつ倫理的に問題なく運営されることを保証するために欠かせないものであり、より持続可能で公平な世界を実現するための重要な役割を果たします。

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